田舎には仕事がない。
都会に行く方が色んなチャレンジが出来る。
こんな言葉を耳にすることがしばしばあります。
これって本当なんでしょうか?
6月にしとしとでインタビューをした松岡大悟さん、小林良斉さんの二人の師匠のお話からそんな疑問が湧いてきました。
このコラムでは田舎には仕事がないというある種の常識を軽やかに飛び越えるお二人の姿から学んだことを発信します。
ぜひ皆さんの意見もお聞かせください。
では参ります。
◯課題のあるところに仕事は生まれる?
そもそもお仕事って何のためにあるのか。誰のためにすることなのか。
そんな当たり前、だけど忘れがちな問に松岡大悟さんは答えてくださっているようでした。
この問に対する答えはいくつもあります。
もちろん、自分が生きていくお金を稼ぐためというのも答えだし、自己実現のためとか、人のためとかも答えにはあると思います。
大悟さんはそれら答えをバランスよく体現しているようでした。
大悟さんが学校を卒業し社会人として地元に帰ってきたときには、塗装業とう自身の職業に可能性は感じなかったとお話になっています。
その大悟さんは、様々な人の出会いや転機となる出来事を経て、塗装業が最も可能性のある仕事なんじゃないかとさえ思えるようになったそうです。(詳しくはこちらの記事をご覧ください)
大悟さんが塗装業の可能性を広げる出来事の一つが空き家問題でした。
いま全国的に問題になっているように香美町でも空き家が問題になり始めたとき、「空き家のような築年数が経った建物を変える最も手っ取り早い手段が塗装だと思った。」と大悟さん。
そこから大悟さんはペンキ屋としてDIYを応援しようと考えるようになります。
塗装は色を付けることはもちろん、家を守るためにも必要な要素。
そんな塗装の専門家として、自分が塗るだけでなく、正しいDIYを伝え、応援するようにしようと発想を変えたそうです。
そうすると空き家をペイントするワークショップなど仕事の幅が広がった。
まちの課題が仕事に繋がることを証明するようなお話でした。
大悟さんと同じく6月に取材をした小林良斉さんにも似た発想がありました。
小林さんは庭師を生業にされています。
庭師という仕事は、時代の変化や季節という変えられない制約条件に対する適応などによって変化してきていると聞かせてくださいました。
時代の変化で言えば、以前は材料を仕入れて庭をつくるという仕事でお金を生み出せていたものが、新築の家が減ってきたことで、伸びてくる枝を切ったり、既存の庭を修復させていく方向に仕事が変化しているそう。
これは言い換えると、材料費からお金を生み出すのではなく、時間や仕事の内容に応じてお金を生み出す形への変化です。
また、小林さんが住んでおられる小代区は豪雪地帯であり、冬になると庭での仕事が出来なくなってしまいます。
会社員のような働き方のイメージからは想像できない課題ですが、このような制約条件の下でいかに仕事をつくっていくかを考えることで小林さんは新たな仕事をつくりだします。
昨冬は、木を切って薪を作り、薪ストーブの燃料として売れば、同時に景観の維持にも繋がるのではないかと考え、薪の販売を始められました。
このように、困難で悩ましい状況が考えたり工夫をするきっかけを与えてくれることがあるようです。
田舎と呼ばれる地域には知られている通りたくさんの課題があります。
そういった意味では田舎ほどクリエイティブな発想がしやすいのかもしれません。
もちろん都会にも課題は同じように、もしくはそれ以上にあるのかもしれません。
ですが、「課題に対して発想を変えて仕事をつくり出そうとしていることが口コミで広がり、次の仕事に繋がる」という、顔の見える関係だからこそのサイクルが起きる土壌があるという意味でも、潜在的には田舎に仕事は山ほどありそうです。
◯田舎ならではの働き方改革
最後に。
今世の中では働き方改革という言葉をよく耳にします。
その言葉の意味とは少し違うかもしれませんが、地域には古き良き(今となっては逆に最先端?)働き方改革があるように思います。
小林さんは今後地域で庭師として仕事をする上での展望として「庭師だけにフォーカスするのではなく、コミュニティの人との関わり合いの中で仕事を手伝いあったりする柔軟な仕事のやり方をしていく。」とおっしゃっていました。
人口が減り、経済も縮小傾向にある地域で仕事を維持するには、「助け合いながら暮らす」という当たり前に対価を支払い、一つの仕事にこだわらず変化にしなやかに対応する能力が求められています。
それを認識し、想いを貫きながらも働き方を自在に変化させようとする姿が、おふたりへのインタビューから見えた気がします。
これは今に始まったことではなく、僕らのおじいちゃんの世代やもっと前の世代の方は、農家をしながら海で漁をしたりという形で体現してきた生き方なんじゃないかな。
(文:山本 修太郎)