前回の大悟さんのお話…「やる気スイッチ」
「まちづくりをしない町にしていきたい」
大悟さんは塗装屋さんをやると同時に、町との接点としてNPO法人TUKULU代表としての活動もされています。
TUKULUを通して、町のことに主体的に関わるようになったのは40歳になるタイミング。
それまで町との接点であった商工会青年部の年齢制限が、当時40歳だったことで町のために活動する場所がなくなってしまったことがきっかけでした。
町が成り立っていることではじめて成立するお仕事に従事していながら、町のために活動できる受け皿がないことに危機感を覚えたそうです。
それを同級生に相談したことから立ち上がったのが、NPO法人TUKULU。
町の課題でありながらも、既存の団体や活動では手が届いていない領域をカバーしていくことができたらいいと大悟さんは言います。
設立直後から、香美町から委託事業をうけ、移住定住に関わる施策を行なっています。 このインタビューを行ったglassもTUKULUがリノベーション、運営している場所です。
そんな大悟さんに、町と大悟さんの今後のことをお伺いしました。
大悟さんが住む香美町という街をどんな街にしたいと考えているのか。
その中で大悟さんがやっていきたいと考えているのはどんなことなのか。
そんな質問をぶつけた時に帰ってきた言葉が冒頭の言葉。
「まちづくりをしない町にしていきたい」
意外。
これだけ町のことを考えて、町を元気にしようと活動されている大悟さんからまさかこんな言葉が出てくるなんて。
どういう意味なんでしょう?
「町おこし、まちづくり、を敢えてやるなんて違和感しかないんだ」
「住んでいる人が潤って、そこに住んでいる人が普通に幸せであれば、そこにある外から見た、この地域の価値になんて気づいていなくてもいい。」
「一昔前まではここ香美町もそんな活動はしなくてもみんな幸せにいきてこれた。」
「当たり前に幸せな町であればいい。 経済的に整ってくれば、そういう活動をする必要も無くなってくる。 そういう意味で事業継承などを考えて行く必要がある。」
「今はUターン、Iターンなんてことが持て囃されているけれど、今までも町に住んでいた若者が全員が帰ってきていたわけではない。 一定数帰って来れば町は成り立っていく。 その帰ってきたいなって感じる若者が帰ってこれる場所を作ってあげられればいい。」
「そしてそのために、 TUKULUを通して町のために活動する若い層を支える存在になっていきたいな」
言葉の端々から、地方創生やまちづくりというワードが流行として使われている現状に対しての、当事者としての危機感が感じられました。
「普通に幸せであればいい」という言葉の、単純さと重さを、立ち止まって受けとめてみてもいいのかもしれません。
2時間半の時間を通して感じたのは、大悟さんの素直さです 。
TUKULUを立ち上げる際にも、お仕事のあり方を考える時にも、普通の人だったら「まぁそんなもんか」と流してしまうところを真剣に考え、そのために行動するという自分への素直さ。
大悟さん、これってどこから来るんですか。
「子供の影響も大きいかなぁ。 やりたいことはいつでもできるとおもっていて。 自分がやりたいことをやっているかっこいい姿を見せたいっていう意識はあったかもしれないな」
最初の紹介文に訂正を。 松岡大悟さん。 松岡塗装店の社長にして、NPO法人TUKULUの代表理事長、そしてなにより、松岡家の父であり靖子さんの旦那さんを務めてらっしゃいます。
◯大悟さんから学んだこと
毎回、インタビューの記事の最後に、僕たちが感じたことやポイントかもしれないと思ったことを、さっくりまとめていきます。
まず、お仕事のお話から学んだこと。
自分が持っている技術やスキルの見る視点を変えることで、新しいお仕事がうまれる可能性があるということ。
大悟さんは具体的に塗装の技術を、「色を生み出すことができる技術」だと捉え直すことで、お仕事の幅をひろげていました。
自分ができることを新鮮な目で見てみることが、新しいわくわくのきっかけになるのかもしれません。
もうひとつ。
なにかをやりはじめるとき、やっていくときの気持ちのありようについて、感じることがありました。
なにかに向かい合うとき、それをやる確固たる理由を自分に求めてしまうことってありませんか?
なんでこれをやっているのか。本当に自分はこれをやりたいと思っているのか。
明確な答えが見つからないと不安になってしまう。
大悟さんから感じたのは、そうした問いに対する柔軟さでした。
様々な活動をされている大悟さん。
それぞれに、それをやる確固たる理由があるわけではないような気がしました。
家族であったり、単純な仕事の面白さであったり、地域のためであったり。
その都度、自分のモチベーションの引き出しを開けているような印象を受けました。
やわらかくあること。
自分の感覚を信じるということ。
何かをやるときに確固たる理由を求めてしまうことがあるけれど、自分の中にあるいろんな気持ちを受け入れて、それでもいいと思うことも大切なのかもしれません。
そして、最後にも書きましたが、インタビュー時間を通して強く感じたのは大悟さんの「素直さ」です。
大悟さんは、自分の違和感に対して、そして周りの人の言葉に対してまっすぐでした。
その素直さが、お仕事の幅の広がりや、TULULUの活動の源泉になっているように感じました。
(文:芝田 昂太郎)
松岡塗装店
代表:松岡大悟 |
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NPO法人 TUKULU
理事長:松岡大悟 |